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IROAST Researchers - 才ノ木 敦士 准教授

Apr 21, 2022

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岩盤の変形や動きを正確に理解し
鉱山開発や地熱開発を、安全かつ持続的に

才ノ木 敦士 准教授
IROAST国際共同研究員
大学院先端科学研究部(工学系)
(IROAST在籍期間:2017年1月1日~2021年3月31日)

 

 

地球の深い場所を掘る鉱山開発や地熱開発を安全に、そして持続的に行うためには、大深度にある岩盤への理解が不可欠。「ロックメカニクス」と呼ばれる分野で、岩盤の応力や地震発生をシミュレーションし、そのメカニズムを研究します。資源開発分野への応用を目指しているのが、才ノ木敦士准教授です。

 

■ 私たちの暮らしに欠かせない、資源開発を安全に

Q: どんな研究をされておられますか。

才ノ木:地熱開発は、大深度にある温かい液体を抽出するものなので、それによって微小な振動が発生します。近辺の住民の不安につながる可能性もありますので、できるだけ微小振動を起こさないようにできないか。また、逆に、その微小振動を利用して、大深度における、目で見ることができない部分の岩盤がどうなっているのかを調査する研究も行っています。

 具体的に言うと、まずは、地下の岩盤に働く応力の正確なシミュレーションです。大深度における岩盤にはものすごい応力が作用し、しかもその力は同じ深度でも一定ではありません。応力が大きな場所の近辺で鉱山の掘削をすると、岩盤に大きな変形が生じたり、地震を誘発したりする可能性があります。岩盤に働く応力を正確にシミュレーションできれば、変形や地震発生を予測することが可能になります。そのほか、発生する地震の規模のシミュレーションも行っています。岩盤が破壊されてから地震が発生するまでのプロセスを解明し、地震の大きさをより正確に予測する研究です。

Q: 地熱開発においても、地震が発生するのでしょうか。

才ノ木:地熱開発は、大深度にある温かい液体を抽出するものなので、それによって微小な振動が発生します。近辺の住民の不安につながる可能性もありますので、できるだけ微小振動を起こさないようにできないか。また、逆に、その微小振動を利用して、大深度における、目で見ることができない部分の岩盤がどうなっているのかを調査する研究も行っています。

 そのほか、IROASTが重点を置く「Well-being社会構築のための科学技術」に関する研究活動として、二酸化炭素の地下貯留技術を研究しています。微生物を活用して二酸化炭素を地下に貯留するというもので、微生物に詳しい土木工学の先生と共同研究を進めています。

 

Q: なぜこの研究に進んだのですか。

才ノ木:小さい頃からショベルカーが好きでした。高校3年生で進路を決める時になって、宇宙もやってみたかったのですが、やっぱり重機を運転する仕事がしたいなと。

 それで鉱山に興味を持ち、その勉強ができる北海道大学に進学しました。学部3年生で研究室に所属する時、露天掘り鉱山の数値シミュレーションを研究している研究室があり、「ビビッ」ときたんです。修士課程に進み、大きな鉱山会社に入るなら北米だと思ってカナダ・モントリオールのマギル大学に留学。博士課程で学ぶうち、研究や論文を書くおもしろさを知りました。博士課程修了後、そのままマギル大学でポスドクとして2年研究。契約が切れる時にIROASTを知って応募し、熊本に来ることとなりました。

 

■ 潤沢な研究費、経験や知識豊富な技術スタッフが研究を支援

Q:IROASTの魅力はどんなところですか?

才ノ木:熊本大学に来る前は、イタリアでポスドクとして研究していました。さらに研究を進めるために所属先を探していた時、ウェブサイトで知ったのがIROASTです。

 なんといっても研究費を潤沢に、かつ、毎年、研究成果とは関係なく頂けるのが大きかったです。すぐに成果が出る研究ではなく、長い目で見なければいけない研究の場合は特に助かります。私も、IROASTでの研究費で整えることができた実験装置や、数値シミュレーションソフトを使った研究の成果が、今ようやく出始めています。

 事務スタッフのサポートも充実しています。IROASTの研究者は、学生の指導はできないため、研究室にいる間は一人きり。事務所に行くといろいろな話もできて、精神的な支えにもなりました。

 

Q: IROASTだからできたことはありますか。

才ノ木:海外とのネットワークの「増強」です。私はもともと、海外にも知り合いの研究者がたくさんいます。IROAST在籍中は、彼らを訪ねて、オーストラリア、北米、中国などを訪問し、研究ネットワークを構築できました。現在は工学部所属となり、学生の指導も行わなければならないので、海外出張する時間がなかなかとれません。IROASTは、若手研究者に研究だけに没頭する時間を与えてくれるので、自由に海外を訪れることができたんです。それも、ありがたかったですね。

南アフリカ地下鉱山にて

 

Q: 熊本大学全体の研究環境はいかがですか

才ノ木:最近、エックス線CTを使う実験をしていて、設備だけでなく技術職員のサポートが充実していると感じています。熊本大学の技術職員の方は、知識も経験も豊富。私たち研究者と深いディスカッションをして、実験がより良い方向に進むようサポートしてくださるので、とても助かっています。

Q: 若手研究者へメッセージをお願いします。

才ノ木:日本人は働き詰めで、研究者にも、朝から晩まで研究室にいる人が少なくありません。熊本大学に来る前のカナダでは、周りの研究者たちが自分の時間を大切にしているなと感じていました。私も、研究半分、趣味のロードバイク半分という生活でした。

 研究にはひらめきが大事です。そのひらめきは、趣味にいそしんでいる時やリラックスしている時など、研究とは関係ないことをやっている時の方が得やすいんです。これから研究の道に進む人にはぜひ、息抜きを大事にしてほしいと思います。


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- IROAST Staff

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