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IROAST Researchers - László Pusztai卓越教授

Nov 17, 2022

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液体やアモルファスの構造を原子レベルで理解する

László Pusztai  卓越教授
国際先端科学技術研究機構(IROAST)/ウィグナー物理学研究センター(ハンガリー)科学顧問

 


 

IROASTでは、世界トップレベルの大学・研究機関に所属する世界一線級の研究者に卓越教授として、セミナーやシンポジウム等での講演や、熊本大学の研究者との共同研究、大学院生など若手研究者への研究指導を行っています。その一人がLászló Pusztai卓越教授で、IROAST国際アドバイザリーボード委員として、IROASTの取組みや成果、計画について国際的な視点からの提言も行っています。

※ 本記事は英語での書面インタビューを和訳したものです。

 

■ 「無秩序」な物質の構造に興味を持ち、解析研究を進めてきた30年

Q: 研究内容について教えてください。

Pusztai:私は30年以上にわたり、液体やアモルファス(非晶質物質)の構造を原子レベルで決定することを主な目的に研究してきました。中性子やX線の解析実験を「道具」として、その結果をコンピューターでシミュレーションし解析しています。その一つとして、逆モンテ・カルロ法(RMC: Reverse Monte Carlo)※1と呼ばれる、コンピュータモデリング手法の確立と発展にも積極的に取り組んできました。逆モンテ・カルロ法は、水や水溶液、アルコール水溶液、金属ガラスや共有結合ガラスなど、さまざまな液体や非晶質(結晶性のない固体)物質の構造決定に応用されてきました。例えば、塩やアルコールが水に溶ける仕組みや、DVDや一部のメモリーデバイスの読み書きの仕組みなど、私が進めてきた研究は、そのような理解に役立っています。

※1 逆モンテ・カルロ法:通常は実験データにフーリエ変換と呼ばれる数学的な解析を行って原子配列を求めますが、この手法では逆に原子配列をあるモデルとして立ててから実験データを再現しようとする「逆問題」の立場で解析を行います。原子の位置を少しずつ変化させ、実験データにより合うときは採用、合わないときも一定の割合で採用するという、メトロポリスのアルゴリズムを使って、モデル原子配列が実験データをより再現するまで繰り返しを行います。
(参照:熊本大学プレスリリース「金属ガラスのチャンピオン-最大サイズの金属ガラスの原子配列の秘密」

 

Q: 今の研究を始めたきっかけは何ですか?

Pusztai:この分野は、よく知られた結晶学の方法を使うことができないため、これまで非常に困難なものでした。このような「無秩序な」物質の原子・分子構造を詳細に決定する方法がありません。一方で、私たちの身の回りにある物質の大部分がこのカテゴリーの物質です。水や海水、また調理や腐食の過程などを考えてみてください。人体も様々な水溶液の巨大で複雑な集合体です。

私が若い研究者だったころ、興味深い問題が目の前にたくさんありました。そして、経験豊富な同僚たちの影響もあって、この研究分野にとどまることができました。

 

Q: 今後、期待される研究成果は何ですか?

Pusztai:構造-機能相関を理解することは、常に望まれることであり、非常に重要な成果となります。特に、水素結合が支配的な比較的単純な液体混合物(様々なアルコールの水溶液など)の構造に関する知識をもとに、タンパク質が生体内でどのように溶けるかを理解したいと考えています。

熊本大学の細川伸也特任教授や中島陽一准教授とともに、(1)いくつかの金属ガラスにおける「若返り」効果の構造的背景を明らかにすること、また(2)地球の内核に似た超高圧高温下の液体鉄の構造を理解すること、を目的に研究を進めています。

 

逆モンテ・カルロ法(RMC)で見たバルクの液体四塩化ゲルマニウム(左)と液体リン(右)。
どちらの液体も四面体形状の分子を含んでいる。

Pd-Ni-Cu-P系バルク金属ガラス(非結晶性金属合金)中の原子分布。
非常に高密度な構造であることがわかる。

 

■ 正しい質問をすることは、その答えを見つけることと同じくらい大切

Q: いつ頃、研究者になろうと思いましたか?どうしてですか?

Pusztai:たしか修士論文をかいているときに、この分野の仕事を続けたいと思うようになったと思います。

私は、正しい質問をすることが、その質問に対する答えを実際に見つけることと同じくらい重要である、という状況が好きです。そして、いまでも大好きです。研究者のいる環境は、賢い同僚である研究者に囲まれて、知的レベルが高いものです。そのことも気に入っています。さらに、研究の場では、学生が先輩の意見に疑問を投げかけても問題にならないことが殆どという、ある種の「自由さ」を感じることができたのも魅力でした。

 

Q: 長年、研究に携わるきっかけは何でしょう?

Pusztai:修士や博士課程の学生のように若い研究者たちは、私に大きなモチベーションを与えてくれています。彼らは常に私の意見や標準的な手法にも疑問を投げかけるので、私は常に最新情報を得ている必要があります。それが「経験豊富な研究者」としての継続的な原動力になっています。例えば9月のIROASTシンポジウムの特別講演での討論で出てきたように、いつ新しい科学的な問題が現れるかわからないということも、私の原動力となっています。

 

専用サーバールームでの液体構造研究グループメンバー
(左からL. Temleitner博士、Sz. Pothoczki博士、I. Pethes博士、L. Pusztai卓越教授)。

 

■ 研究することを楽しんで!

Q: 熊本の印象はどうですか?

Pusztai:熊本は住みやすいところですね。6月から9月の気候はきついですけど・・・でもこれは熊本のせいじゃないですよね。勉強するにも仕事をするにも、楽しむのにも程よいサイズ感で、人が多すぎるわけでもなく、うるさすぎないところです。私にとって水前寺成趣園が特にお気に入りの場所です。熊本大学の周辺、特に立田山や白川、坪井川を散策するのも好きです。

 

Q: IROASTに期待することは?

Pusztai:熊本大学もそうですが、日本の大学には、国際的な共同研究の経験や海外に滞在経験のあるスタッフがもっとたくさん必要でしょうね。そのような教授陣は若い学生たちが自国の枠を超えて活躍するのに役立ちますし、気候変動などのグローバルな課題に取り組むときにもますます重要になるでしょう。IROASTは設立以来、積極的にその役割を担ってきました。本来の目的である国際化の推進を果たすためには、いまよりも規模も予算も大きい方が望ましいように思います。

 

Q: 若手研究者へメッセージをお願いします。

Pusztai:研究者の給料が一般企業で働くよりも低くても、あきらめないで! 自然の仕組みに興味があるうちは、会社員よりも研究者の方が楽しいと思います。一方で、応用研究やイノベーションの実践など、自分の軸がブレていることに気づいたら、臆することなく切り替えてチャレンジすることを恐れないで。研究の仕事を(少なくとも時には)楽しんでこそ、満足のいく研究者キャリアを築くことができると思います。

ハンガリー科学アカデミー会員にも選ばれたノーベル賞受賞者フレデリック・ジョリオ=キュリー(化学、1935年)の銅像と液体構造研究グループ。
この銅像は、さまざまな経緯を経て、ブダペスト郊外の丘陵地帯にある人里離れたウィグナー研究センターの本拠地に設置されることとなった。
(左から、I. Pethes博士、P. P. Jóvári博士(現グループリーダー)、L. Pusztai卓越教授、Sz. Pothoczki博士、L. Temleitner博士)

 


リンク
- IROAST Staff - 卓越教授

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