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IROAST Researchers - 佐々木 満教授

Aug 25, 2022

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フードロスを削減しながら、
環境負荷低減、経済活性化、健康長寿にも貢献

佐々木 満   准教授
IROAST国際共同研究教員/産業ナノマテリアル研究所

 


 

SDGsの広がりから、近年、環境問題やフードロス削減への関心が高まっています。佐々木満准教授は、資源を再利用するだけでなく、できるだけ環境に負荷をかけない方法で資源を有効活用し、さらに経済の活性にまでつなげる研究をされています。

 

■ 環境に配慮した技術で、捨てられてしまうものから有効成分を取り出す

Q: 研究内容について教えてください。

佐々木:私の研究のベースは、身の回りのゴミとされるものや未利用で捨てられてしまうものを収益のある物質や材料に変換して、経済活性化を図っていくことです。ゴミとされるものとは、食品の加工残さ(残りかす)やバイオマス、農業や漁業の現場で出てくる稲わらや劣化した海藻類等といったものです。これらを再利用して作られた肥料などがありますが、もっと農林漁業従事者の収益につながるようなものに変換できないかと考え、現在、複数の企業と共同研究を行っています。

その一つに、酢を作る過程で大量に出る酒かすや米ぬかを使って、新たに酢を作る研究があります。これまで産業廃棄物として処理してきた酒かすや米ぬかを高温の水で処理することで、中に含まれるタンパク質や多糖類を、オリゴ糖やオリゴペプチドといった水溶性の物質に変換させ、酢の製造工程に再び加えて新たな酢を作れないかと考えています。現在は、酒かすや米ぬかの成分を変換してできたアミノ酸等を多く含む液化物を、酢酸発酵させる試験を行っていて、市販の黒酢等と遜色ないほどの酢の醸造に成功しています。しかし、苦味が強いなどまだ課題があり、販売はもう少し先の話になります。

 

Q: 今の研究を始めたきっかけは?

佐々木:大学院生のとき、水に溶けない性質のセルロースを水に溶かす研究をしたことがきっかけです。どうにか溶かそうと様々な薬剤を使えば環境破壊につながっていくので、水だけでできたら画期的だろうと考え、特殊な機械を使って、温度や圧力を変えながら実験していきました。

今は、二酸化炭素を使って、植物の皮などから有効成分を溶かして抽出する研究も行っています。水や二酸化炭素のような環境に害のないものだけを極力使用して、抽出した有効成分をサプリメントの原料などに使うことで、環境にも健康にも良いものを作れないか、このやり方を産業の基盤に乗せていきたいと考えています。

 

■ 海外とつながることで、日本では得られない成果や出会いにつながる

Q: IROASTの魅力は何ですか?

佐々木:私は、IROASTの国際共同研究員と産業ナノマテリアル研究所の准教授を併任しています。産業ナノマテリアル研究所は、2D(二次元)シート状の材料等に注目して研究している所ですが、2D以外の研究テーマについては、IROASTの研究テーマとしてサポートしてもらえる点がとても魅力的ですね。

2020年から2年間は、IROASTのヤングリサーチユニットでお世話になっていました。このユニットでは通常、フランスや韓国の研究者と共同研究を行うのですが、メキシコやカナダの研究者にもプロジェクトに参加していただき、データを見せ合うなど、オンライン上で交流を図ることができました。この2年間はコロナ禍で海外へ行くことができなかったのですが、また海外と行き来できる環境に戻りつつあるので、今後は現地で実験を行うなどして、国際的なネットワークの強化につなげていきたいと考えています。

 

Q: 熊本大学内でも共同研究は多いですが、国際共同研究ならではの良さは何ですか?

佐々木:一言で「バイオマス」と言っても、栽培されている環境によって同じ品種でも、香りや強度などが異なってきます。フランス産の材料を使って日本で実験しようと思っても、輸送中に材料の性質が変わってしまいます。そういった材料を扱うときは、やり方を共有して現地で実験してもらうことで、日本では得られないデータを得られます。また、海外の研究者と様々な情報交換を行うことで、新たな研究につなげたり、技術を世界に広げたりもできます。

 

 

■ 興味がないテーマでも、やってみると面白い! そんな研究を用意しています

Q: 休日は、どんなことをして過ごされていますか?

佐々木:妻の影響で釣りが好きになりました。週末の夜に天草へ行き、夜釣りや朝釣りを楽しみます。最近はあまり釣れないのですが(笑)、釣れたときは魚を持ち帰って、刺し身などにしていただきます。また、妻がInstagramで見つけたパスタやスイーツのお店を食べ歩きすることもあります。

 

Q: 若手研究者へメッセージをお願いします。

佐々木:学生時代の私は、何か明確な目標があったわけではありませんでした。しかし、修士課程でセルロースを水に溶かす研究をして、セルロースがどうやって形を変えるのかということに興味を持ち、博士課程まで進み、現在に至ります。一見興味がないようなテーマでも、やってみると面白くて、その面白さを分かってくださる人も現れます。面白い研究を用意して、お待ちしてます。


リンク
- IROAST Staff - 国際共同研究員
- 佐々木研究室

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